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フライング・ポストマン・プレス

2018/03/30

【インタビュー】全国順次公開中! 《74分ワンカット撮影》の画期的青春映画『アイスと雨音』に出演の若手注目株・森田想、田中偉登が語る撮影の裏話

「頭の中身も心も全部がぐっちゃぐちゃになりました」(森田)

「この年でしかできなかった映画だと思います」(田中)

 

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松居大悟監督の最新作の主人公は、初舞台を踏むことになった少年少女たち。その舞台が突如中止になった時、彼らはどうするのか…言わば“結末のその先”を描いた映画なのだが、なんと“全編74分ワンカット”で撮ったというから驚いてしまう。約2週間という製作期間、もがき続けた十代の俳優、森田想と田中偉登に話を聞いた。映画が完成した今、“結末のその先”にいる彼らが思うこととは。

 

 


 

 

 

――1本の映画をワンカットで撮影するとなると、相当な準備が必要だったかと思います。どんなことから始めたんですか?

 

田中「まずは本読みでした。その日が初顔合わせの日で、その場で“ワンカットで撮ります”と初めて聞きました」

森田「それがオーディションの2日後だったんです。そこで映画の脚本を初めてもらい、今回の役名も私たち自身の名前で行くというのを聞いて」

田中「その2日後には稽古が始まりました。去年の3月中旬から末ぐらいまで、2週間で一気に作っていった感じです」

 

――オーディションの際は、物語の内容がまったくわからない状態だったということですか。

 

森田「そうなんです。オーディションの時の脚本は、本編の脚本の抜粋という感じでしたから」

田中「劇中劇の部分だけを切り取った脚本だったよね。それを読んだだけでは映画の全貌はわからなかったです」

 

――しかも本作の劇中劇の台詞は非常に文学的なものですから、より物語の筋は掴みにくかったのでは?

 

森田「本当にそうでした。“これが松居ワールドなのかな”というぐらいに思っていました(笑)」

 

――役名が自分の名前とすると、そのキャラクターも自分を反映させて作っていったんですか?

 

田中「モロに自分でした。役を演じているという役じゃなかったよね」

森田「そうだね。劇中劇があるので演じている部分があると思っていたんですけど、全体的に自分を出していくしかない映画だったんです。多分他のみんなも演じているという感じはそこまでなかったのかなと思います」

田中「僕たちにアテ書きしてくれたような感じでした。それぐらい、自分に寄せられました」

 

――オーディションの際に話した内容が、脚本の決定稿に反映されるということもあったのでしょうか?

 

田中「それは僕たちはわかりませんが…ただ決定稿にも“ここはフリートークで”とか、“ここは気の利いたひとことを”とか書かれていて。決まった台詞がなく、自分たちに任されるところも多かったです」

森田「例えば、丈(※戸塚丈太郎)が終電に乗り遅れてしまうくだりがあるんですけど、あの暗闇でのシーンは全部フリートークです」

田中「あと、映画の中で誰かメンバーをイジっているところは割と稽古期間に起こったことを反映していることが多いです。例えば、稽古中に誰かが誰かをイジって笑いが起こった…というものをそのまま本編で使ったりしています」

 

――ライブ感満載で作られたわけですね。ある意味、フィクションでありながらドキュメンタリーでもあるという。

 

田中「はい。物語の構造自体も現実と虚構の狭間にあるというものなのですが、作り方もそういう感じでした」

 

――撮影手法もアイデア満載ですよね。例えば、森田さんがカメラ目線で台詞を言う間に場面転換されていたりと、驚きの仕掛けがたくさんあって。

 

田中「そういう仕掛けは僕たちもまったく知らなかったのでビックリしました。松居監督、本当にすごいですよね!」

森田「撮影中はモニターを見られなかったので」

田中「セットを組んでやったわけではなく、本当に下北沢にある稽古場や劇場を使って撮影していたのでまず場所が狭かったです。松居監督すらそこにはいられないというぐらいのスペースでやっていて」

森田「私たちの前にはカメラマンさん、音響さんも狭いスペースで身を縮めながら…という感じでやっていました」

 

――その狭いスペースで緻密に動き、状況を刻一刻と変化させていく。演者側としては相当複雑な動線をこなしていくことになったと思いますが。

 

森田「そうですね。その動きの部分は稽古の時に全部固めていきました。カメラマンさんに“ここで前に回りたいからその時だけ2秒止まって”ということを言われるんですね。そういう細かいところまで調整していって。そうしないと本番で混乱してしまったり、誰かが変なところでぶつかったりすることになってしまうので」

田中「でもカメラマンさん、本当にすごかったです。基本的には僕たちの芝居を優先した上で動いてくれたんです」

 

――カメラワークのほうが芝居に合わせることもあったと。

 

田中「はい。だから僕たちが気を使うところなんて、スタッフさんに比べたらほとんどなくて。スタッフさんが本当にすごかったです」

 

 

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――自分が演じる役柄についての疑問点も、すべて稽古期間中に解決していったのでしょうか。

 

田中「はい。そういうものも全部稽古期間で終わらせました。僕、一度稽古期間中に悩んでしまって…。劇中劇の始まりのところで、この後物語が現実と虚構との狭間を揺れ動くことになるという場面だったのですが、初手は大事だからちゃんとやりたいと思っていたんです。でも、その場面の田中偉登としては内容的に勢いでしかできないところもあって…。どうすればいいのかと悩み、それで森田に相談したんです」

森田「あれはとてもおもしろい光景でした(笑)」

 

――と言うと普段、田中君はあまり演技で悩んだりしないんですか?

 

田中「今回僕は割と他の人の悩みを聞くほうが多かったので。本多劇場の舞台の上で森田に話を聞いてもらったよね」

森田「そうだったね(笑)」

 

――そういう時の相談相手は森田さんだったわけですね。

 

田中「そうですね、自然と」

森田「同い年だというのも大きかったと思います」

田中「森田にひと通り聞いてもらったら、もうやるしかないなと思えました」

 

――森田さんは、演じる中で迷いが生じるといったことはなかったですか?

 

森田「正直、悩んでいないことはないというぐらいでした(笑)。なかでも一回、終盤にすごいのがきまして。その時点で“こんな感じでいいのかもしれない”と自分の中では定まった感じがあったんです。でもその時に監督に呼び出され、“今まで稽古やってきて、結構固めてくれていると思うんですけど、全部忘れてください”って」

田中「鬼ですよね(笑)。僕ビックリしちゃいました、聞いて」

森田「今回の映画には、劇中劇の役としての森田想と、その役を演じている森田想がいて。その劇中劇の想が結構奔放なので、その役を演じている想が役に引きずられていっているような…そんな感じをそれまでは表現していたんです。でも監督は“劇中劇の想”と“その役を演じている想”と“そのふたつを演じている本物の想”と、3つの森田想を交錯させた上で“素の森田想”を見せてくれって」

田中「本番の4日前ぐらいだったよね」

森田「どこまで忘れていいのかもわからなくて。ある箇所で、ある人の周りを想が一周するんです。それは稽古で動き決めていたところだからやったんですね。でもそうしたら監督に“なんでそうやって決めて動いているの?”って言われて…。もうそこで私、潰されちゃいまして。普通に監督の言葉を聞いていたつもりなんですけど、気付かないうちに泣いていたみたいで。もう頭の中身も心も全部がぐっちゃぐちゃになったんです。で、その時に松居監督が“それがいい!”って」

田中「どれ?っていう(笑)」

森田「そう(笑)。監督は“そのままで何も考えないで”って」

 

――松居監督が森田さんに求めたことはつまり、自意識は抜きつつ、でも主観で演じるという、相反するものを両立させるということですよね?

 

森田「そうなんです。ある意味ものすごく理論的で、でもものすごく感情的という…。実は私もその時点で、“固めていくのも何か違うような気がする”とどこかでは違和感を持っていたんです。そのうっすらと抱いていた違和感を、思いもしなかったタイミングで監督に刺されたものだから余計に混乱してしまって…。そこからはとにかくもう数をこなしていくしかなかったです。それで時々の自分に任せていくしかなかった。その中で監督に“それが近い”って言葉をもらったら、その時の感じを大事にしていくようにしました」

田中「監督が“それに近い”とか“それだ!”って言ってくれるとうれしかったよね。その監督の言葉がみんなの勇気になっていたと思います」

 

 

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――撮影の最後に、監督の初めての“カット”の声を聞いた後はどんな気持ちになりましたか。

 

田中「監督の“カット!”の後、スタッフさんみんなが客席に出てきて。みんな泣いているんですよ」

森田「その姿見て私は安心しました。“ああ、みんなでひとつの映画を作れたんだ”って」

田中「ひとりずつコメントをと言われても、泣き過ぎて喋れなくて(笑)」

森田「みんなに感謝を伝えたいのに全然言葉にできなくて…。私も“なんか、なんか…”しか言えませんでした(笑)」

 

――完成した映画を観た後も感慨深かったのでは?

 

森田「はい。普通の映画じゃなかったので、本当に初めて初号試写の時にその映画の全貌を目撃したという感じでした。エンドロールに入った瞬間から涙腺崩壊で。その後、スタッフさんとみんなでごはん食べに行ったんですけど、その時初めてクランクアップの時に言いたかった言葉が言えました。“ありがとうございました”って」

田中「なんか、いいなあ…。実は僕だけみんなと一緒に初号試写を観られなかったんです。最初はひとりで、しかもスマホでイヤフォン付けて観たんです」

 

――え、スマホでですか!?

 

田中「はい(笑)。だからその後、劇場でもう一度観たんです。当たり前ですが、スマホで観た時とはまったく違う映画になっていてすごく感動しました。映画の中で歌うMOROHAさんの言葉の刺さり具合もまったく違いました」

 

――そんな映画がいよいよ劇場公開を迎えます。今はどんな心境ですか?

 

森田「この映画が公開されて皆さんに観てもらえることはうれしいんですけど、実はちょっと寂しいっていうのもあって。私的にはすごくがんばって自分のすべてを出したので、この映画が自分の一部みたいになっているところがあるんです。だからそれが離れるとなると…やっぱり少し寂しいなって」

田中「僕は寂しさはなくて、多くの人に観てもらいたいという思いしかないです。正直、映画を撮っていた時は万人受けする映画ではないと思っていました。でも、東京国際映画祭の時に観てくれた方や、その後の試写で観た方々から“いいね”と言ってもらうことがすごく多くて。みんなそれぞれ、この映画で刺さる部分があったんだなってうれしくなりました」

 

――最後にひとつ。この映画の結末のその先の彼らを想像してください。どうなっていくと思いますか?

 

田中「偉登で言うと、舞台公演が中止になったと知った時“安心した”って言うんです。でも、ラストではそう言っていたところとは変わったんじゃないかな。想と向き合い、周囲の人たちに心動かされていって、絶対変わったと思うんです。だから多分、あの後も役者をやっているんじゃないかなと思います」

森田「想はもしかしたらまたすぐ次に進むことはできないかもしれないけれど…でも、こんな悔しさを味わったからこそ、より自分を高められるようにといろんな材料集めをしているんだろうなって。それで最終的にめざすところは、想もやっぱり役者なんだろうなって思います」

 

――この映画の終幕は、物語に登場する若い俳優たちにとってはスタートラインなんでしょうね。

 

森田「(拍手して)本当に」

田中「これをきっかけにして、本格的に俳優の道に進んでいくという」

 

――改めて、本当に得難い経験をしましたね。

 

田中「本当に。この映画を観た他の同年代の役者が“いいな、やりたかったな”って言ってくれることが多いんです。そういう映画に出られたことが本当にうれしいですし、この年でしかできなかった映画だとも思います」

森田「例えば、この映画を観てくださった大人の方が私たちの姿を観てサムいなとか、イタイなとか思われるとしたら、きっとその方々は17、18歳の頃の感情を忘れてしまっていると思うんです」

田中「これ多分、ハタチとかでやっていたらなんか違う気がする…。いつもなんかもやもやしたものがあって、“どうすればいいんだ!”って思っている今の僕たちだからこそできたのかなって」

森田「17歳、18歳の私たちがやった意味ってそこだよね。そういう私たちだからこそ多分、松居監督が表したかった感情を表現することができたのかなって思います」

 

 

 

 

 

森田 想(もりた こころ)

森田想

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

’00年生まれ、東京都出身。’09年よりミツカン「味ポン」CMに出演し、注目される。主な映画に『ソロモンの偽証』『orange-オレンジ-』(いずれも’15)、『SCOOP!」(’16)、『笑う招き猫』『心が叫びたがってるんだ。』(いずれも’17)など。今後の飛躍が期待される。

 

 

 

田中偉登(たなか たけと)

田中偉登

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

’00生まれ、大阪府出身。’12年に『13歳のハローワーク』でドラマデビュー。映画近作に『デメキン』(’17)、ドラマ近作に『セトウツミ』、『コンデラタロウ』(いずれも’17)、『大阪環状線 Part3 ひと駅ごとのスマイル 桃谷駅篇』(’18)。本作に続き、5/12に映画『孤狼の血』が公開される。

 

 

 

『アイスと雨音』

ice-amaoto.com/ 

’17年/日/74分

監督・脚本・編集 : 松居大悟
音楽 : MOROHA

出演:森田 想、田中怜子、田中偉登、青木 柚、紅甘、戸塚丈太郎、門井一将、若杉実森、他

※渋谷ユーロスペース、イオンシネマ板橋他全国順次公開中

 

©「アイスと雨音」実行委員会


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