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2017/09/20

【インタビュー】10/27(金)より劇団・山田ジャパンの新作『欲浅物語』が上演スタート! 主宰の山田能龍の創作の源となった人生ベストとは

「おかしいのは変わっていく人なのか、変わらない人なのか。
変わることへの恐怖を感じている人にこそ観ていただきたい」

 

 欲浅物語_ポスター

 


舞台、テレビドラマ、映画と幅広いフィールドで演出家・脚本家として活躍する山田能龍。その活動のベースとなる自身主宰の劇団・山田ジャパンの新作『欲浅物語』がこの秋上演される。自身の創作活動の礎となったというさまざまなカルチャー作品の話から、『欲浅物語』で提示したいテーマまで、たっぷりと話を聞いた。

 

 


 

 

――FLYING POSTMAN PRESS本誌10月号のテーマはLIFETIME BEST。山田さんの“人生ベスト”カルチャー作品を伺いたいのですが。映画や音楽、舞台や本などに多く触れるようになったのはいつ頃ですか?

 

「思春期の頃から観たり、聴いたりはしていましたけど、のめり込むという感じではなくて。格好良く“昔から人とは違っていたんですよ”と言いたいところですが、正直に言うとむしろ“みんなと違っていたくない”という人間だったんです。例えば音楽で言うと、“当時からクラブミュージックが好き”なんてことはまったくなくて、世代である尾崎豊やBOOWYをちゃんと通ってきていて。たくさんの人たちを引き付けるものですからそれなりに僕もハマったんですけど、今思うと本当はピンときていなかったかもしれないです。髪型を氷室(京介)みたいにしながらも、本当は“俺はこうじゃないんじゃないか”という思いがどこかにありました(笑)」

 

――では、ピンとくるものに出会ったのはその後ですか?

 

「そうですね。この業界に入ってみたものの、特に何も仕事が来ないという時代…10代後半からまるっと20代で触れたものが、今の僕の源流になっているんだと思います。人間、暇だとどんどん時間を使う達人になっていくんですけど…」

 

――え、どういうことですか(笑)?

 

「つまり、何もやることがないというのが毎日続くと、人間何かしら用事を作ろうとするわけです。まあキツイですよ(笑)。僕の人生の中で一番キツイ作業だったかもしれません。その“用事を作る”の中に、自分の創作のためのインプット作業として他人の作品を観たり聴いたりするというのがあって。とにかく時間はあったので数は多く触れるわけです。それで自ずと自分の好きなものの傾向が見えてきたのかなと思います」

 

――触れてきた作品のジャンルは何が多かったですか?

 

「演劇とマンガとお笑いです」

 

――では、演劇から山田さんの人生ベストを教えてください。

 

「はっきりと影響を受けたと言えるのはシティボーイズさんの作品です。特に’90年代の前半から半ばにかけて三木聡さんが演出されていた作品と、その後の『シティボーイズ ミックス』という作品群が好きです。僕は大阪で新喜劇を観て育ってきまして。新喜劇も好きなんですよ。でも世代的に“斜に構えてナンボ”みたいなところがあったので(笑)、“斜に構えているのにスッとできている”感じのシティボーイズさんがバシッとハマりまして。『丈夫な足場』という公演に“ムヒの夢”というコントがあったんですけど、あれはもうおふざけの手本みたいなもので。舞台面一杯のバカげたサイズのムヒが出てくるんですよ。そのふざけ方のセンスとか、タイトルのアプローチとか、相当影響されましたね。シティーボーイズから入り、その源流である宮沢章夫さん率いるラジカル・ガジベリビンバ・システム、派生して大人計画と、とにかく僕はその辺りの空気が好きでした」

 

――人生ベストマンガは?

 

「高橋留美子さんの『うる星やつら』かな。高橋留美子さんって天才じゃないですか。その天才が20代に勢いに任せて全部乗せでやっているのが『うる星やつら』だと思うんです。ベースがコメディで無茶苦茶なのにリズムがよく、かつキュンとなって香気はウェルメイド。温泉マークとか、錯乱坊(チェリー)とか奇想天外な名前をキャラクターに付けたりするのも衝撃だったし、オープニング曲の電子音感もすごく新しい感じがしてドキドキしました。映画版ももちろん観ていて、なかでも大好きでアホほど繰り返し観ているのが『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(’84)。幼少期にちょっといろいろありまして、“自分以外の全員がグルになり、自分のことをダマしているんじゃないか”と強迫観念みたいなものを子どもながらに抱いていたんです。そういう僕の思いに、文化祭の準備を延々と繰り返すという物語の中で描こうとしているものが重なってきて。“なんで俺のコレ知っているの?”という感じでしたね。そういう点含め、衝撃を受けた作品です」

 

――お笑いの人生ベストはなんでしょうか?

 

「僕、一番好きなのはバカルディ(現・さまぁ~ず)なんです。バカルディさんの単独ライブ『なまたまごかけ御飯』は今でも最高傑作だと思っています。僕、狭間の作品が好きなんですよ。バカルディで一度売れたんだけど、『大石恵三』(※1993年4月4日から9月26日まで放映されたフジテレビ系バラエティ番組)の頃にちょっとダメになり、その後、さまぁ~ずになってまた売れた…そのちょっとダメになっていた時代を僕は“狭間”と言っているんですけど、そこの作品が一番濃いんですよ。もともと才能のある人たちがひとつの作品に対して最も時間をかけられる時代の作品ですから自然、純度とクオリティが高くなる。『なまたまごかけ御飯』はロングコントの連続なんですが、ステージ一本通しての伏線もあり、相当おもしろい。これも、頭から最後まで空で言えるぐらい、死ぬほど観ています」

 

 

 

山田能龍アー写2

 

 


――新作の『欲浅物語』のストーリーは、欲の浅い女の子が言いそうなフレーズが思い浮かんだところから着想を得たそうですね。例えばどんなものですか?

 

「例えば“好きな芸能人、誰でも会わせてあげる。誰に会いたい?”と聞かれ、モジモジと恥ずかしそうにしながら“いいの?…じゃあ……松尾伴内”と答えるとか(笑)」

 

――それは確かに欲が浅い女の子ですね(笑)。

 

「そう、ハリウッド・スターだっていいのに松尾さんと答えるって相当欲の浅い子でしょう? 松尾さんには失礼なんですが(笑)」

 

――そのフレーズから、どう物語になっていったのでしょうか。

 

「これってなんなんだろうって考えていったら、“変化”というテーマに辿り着いたんです。欲って聞くと浅ましいとか思ってしまうかもしれないですけど、本当のところ、社会を変化させていく上ですごく大事なものだと思うんです。例えば土地という概念は“ここは俺の場所だ”と所有欲を出した人がいたから生まれたわけですよね。お金やカルチャー作品だって、結局全部人間の欲を原動力に生まれてきたものだと思うんです」

 

――確かにそうですね。

 

「よく“お前変わったよな”という言葉で変化した人を揶揄する人がいますが、ちょっと待てよと。本当におかしいのは変わっていく人間なのか、変わらない人間なのか…ということをこの舞台で描いてみたい。僕は変化というものは、人と人との良好な関係を継続する上でも絶対必要なものだと思っていて」

 

――それは、ご自分に当てはめて考えても?

 

「そう思います。変わっていく人間はどんどん動いていき、変わらない人はずっと定点ということですよね。変わっていくことは僕は当然だと思うし、僕自身も変わっていっている人間です。だから乱暴な言い方をすると“俺が変わっている感じと同等に周囲も変わっていってくれよ。じゃないと関係が悪くなっちゃう”と思いますね。“あいつ、変わったな”という言葉にある情報操作というか、つまりそういう噂話で人間関係って多少なりとも動いたりするじゃないですか。そういう言葉を受けて悩んでいたり、変わってしまうことへの恐怖を感じているみなさんにこそぜひ観ていただきたい。そして観た後少しでも霞がかっていた視界が晴れたらいいなと思います」

 

 

 


 

 

【profile】
山田能龍(やまだ よしたつ)
’76年生まれ、大阪府出身。劇団山田ジャパン主宰として全作品の脚本や演出を手がける他、ドラマの脚本や構成、アーティストのライブツアーの演出、映画を監督するなど、多彩に活躍。新たに脚本を手がけるドラマ『新宿セブン』(テレビ東京)が10月クールより始まる。

 

【最新舞台】
『欲浅物語』
http://staging.yamadajapan.com/stage/yokuasamonogatari/
作・演出:山田能龍
出演:いとうあさこ、ただのあさのぶ、トミタ栞、与座よしあき、森一弥、あやまん監督、他
※10/27(金)よりCBGKシブケキ!!にて上演
※チケット予約はチケットぴあhttp://t.pia.jp他にて


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