エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス 福岡版

2019/09/05

妻夫木聡・豊川悦司のダブル主演『パラダイス・ネクスト』が福岡で期間限定公開が決定!メガホンを取った半野喜弘監督に迫る!

IMG_9653決定

 

妻夫木聡と豊川悦司がダブル主演を果たし、ヒロインに台湾の人気女優ニッキー・シエを迎え、オール台湾ロケを敢行した話題作が、福岡でも期間限定で公開。“運命の女性”との出会いによって、二人の男は予想もしない事態に翻弄されていくノアール・サスペンス。日本が誇る世界的作曲家・坂本龍一のテーマ曲も加わり、豪華キャストとスタッフ陣によって、アジア映画界の新境地を切り拓く。本作でメガホンをとるのは、ホウ・シャオシェンやジャ・ジャンクーなどの名匠たちの映画音楽で知られる半野喜弘。監督自ら脚本と音楽も手掛け、「生きるとは何か」を問う意欲作。日本映画界を代表する俳優の起用や、本作に込められた想いなど、半野監督の言葉で語ってもらった。

 

……まず、妻夫木聡さん、豊川悦司さんという豪華なダブル主演となった経緯をお聞かせください。

「この脚本自体は十年以上前に書いたもので、(映画化の)実現はせずに眠らせていたんです。その中で主人公の牧野という男がいて、いつも嘘を付いたり適当なことばっかり言ったりするけど、なぜか人を惹きつける笑顔を持っているんです。それから何年か経って、妻夫木くんと初めて食事する機会があって、その中で何か一緒にやりたいねという話から、昔書いたその脚本の話題になった時、目の前にすごく笑顔の良い人がいたなと思って(笑)。最初は「ジョークのつもりで読んでみて」と言うと、その後、妻夫木くんが「ぜひ、やりたい」となって。それから企画が動き出して、相手役のイメージとして長身で長髪の男性だったので、勝手に豊川さんを思い描いていたんです。ある時、知り合いのスタッフとの酒席の場で、豊川さんの事務所の社長さんとお付き合いがあることをきっかけに、その人がお酒の勢いを借りて電話されたんです。その段階では僕は前の作品が仕上がる前だったので、世の中的にはひとつの作品も公開していない状態だったんです。でも事務所の方から「脚本を読むよ」と言ってくださって。それから慌てて、まだPDFに番号を振ってある状態の脚本を送ったら、翌日に事務所の社長さんから「すぐ会えますか?」と。ただ資金調達はおろか、プロデューサーも決まっていなかったので、持っていく企画書すらなかったんです。それで仕方なく家にあった裸の白ワインを1本持って事務所に行ったら、「普通はね、予算からキャストまで事細かな企画書を持ってくるんだけど、半野さんみたいに白ワイン1本持って、豊川を出させてくれという人はいなんだよ」と言われまして(笑)。でも「面白い」となり、豊川さんにも脚本を読んでいただき、ご出演していただくことになりました。その後、プロデューサーにこのことを話したら「それ詐欺なんじゃないの?」と疑われるほどでした。それくらい色んな方々の助けや奇跡的な出会いから実現した作品だったので、仕事のオファーをしたというよりも、おふたりを含め一緒に作り上げたという感覚でした」

 

……そんな奇跡の出会いから生まれた本作ですが、オール台湾ロケによる現地の温度感や湿度を映像から体感できるようなリアリティがありました。

「オール台湾ロケは僕の中で、それありきじゃないとやれないほど、こだわっていました。台湾ってすごく生命力に溢れた国なんです。あれだけの暑さと湿度があるということは、至る所に生命の躍動感があって。台湾の人たちも熱量があり、どこか“自由”な空気感があるんです。人間の根源的なエネルギーみたいなものがある気がして、それをうまく作品として見せたい思いはありました」

 

……メインの舞台を東海岸の花蓮(ファーリエン)にされたのは、なぜでしょうか?

「海と山が共存している感じが良かったのはもちろん、ヒロインのシャオエンが住んでいる設定の大きな屋敷を偶然見つけたことが大きかったです。僕の脚本にも周りに何もないところに巨大な洋館があると書いていたんですが、当初「そんなのない!」と言われていましたけど、まさにそのイメージにぴったりのものが見つかって、何か縁みたいなもの感じました。花蓮は、いまだに手付かずの自然が残っていて、そのロケーションを最大限活かしたいと思いました」

 

……作品を観させていただくと、ノアールサスペンスというよりは、ニッキー・シエ演じるシャオエンを交えた孤独な男たちによる青春映画に映りました。

「僕の中でもどっちかと言うと“青春映画”ですね。シエと会ったと時、純粋さみたいなものがシャオエンに近いと感じました。今回はメインキャラクターたちのバックボーンを一切描かないで物語を進行させていったのですが、それは人物の背景を丁寧に説明してあげたほうが、シーンの意味も伝わりやすいけど、この映画はそういうことじゃない何かがある気がして。だから、あえてそんなことには触れないことに挑戦してみました」

 

……まさにおっしゃる通りで、シーンごとに意味がある感覚はありましたが、それを自分の思考と想像力で創っていきながら観ている感覚でした。

「僕がそもそも音楽家というのもあるけど、これまで僕が書いた脚本の中でも最も抽象的な作品になりました。その抽象性こそがこの作品においては、逆に個性だと思っていて。だから観ている人が途中で迷った時にそれでも先を観たくなるにはどうすればいいかを考えて、キャストの演技が芝居を超えた何かに見えたりすることが大事かなと。そういう意味では演技がフレッシュであるべきだという結論に至り、極力ワンテイクで撮ることを心掛けました。芝居になる前の芝居を撮るような感覚で。でもカメラは長回しを多用し、動き方も大事になってくるので、役者の力量があってこそできたことだと思います。彼らが自分の役を掴んで現場に入って来てくれていたので、妻夫木くんは最初から牧野そのものでしたし、豊川さんは衣装合わせの時からすでに島でしたね」

 

……冒頭の食堂で初めて牧野と島が出会うシーンは、5分以上の相当な長回しで、一方的に牧野が話しかけ続け、島がそれを無視し続ける状況が、多くを語らずともふたりのキャラクターや関係性を物語っているようでした。

「実はあれ、NGテイクなんです。ふたりの間に変な緊張感があるじゃないですか。その理由は豊川さんが「お前、誰だ?」ってセリフを忘れていて、妻夫木くんは麺を食べ終わり、実は戸惑いながらテーブル蹴ってみると豊川さんがそれを元の位置に戻すという(笑)。それから妻夫木くんが「何とか言えよ、島さん!」という振りに「あ、俺だ!」と気付いて、ようやく豊川さんから「お前、誰だ?」と言うセリフが出たんです。普通に問題なく撮れているテイクもあったけど、ふたりが本当の意味でズレてしまっているからこその探り合いが、物語上でのふたりの最初の関係性そのものだったので、偶然的に生まれたこのテイクを採用しました」

 

……もうひとつ印象に残っているのは、牧野とシャオエンが痴話喧嘩して、出ていったシャオエンを牧野が迎えにいく帰り道のシーン。ふたりが小走りで競争する姿が、距離の近さを感じてほのぼのしました。

「あれはふたりのアドリブなんです。牧野の「戻ろうよ」というところまでは脚本にあったけど、その先はふたりの関係性に任せたんです。本来ならそのセリフでカットをかけるけど、撮り続けていて良かったです。このふたりが言葉じゃない部分で心が繋がっている感じが、セリフじゃない何かで伝えることができた僕も大好きなシーンですね」

 

……順撮りではない中で、ふたりの距離が近づいていく感じは絶妙でした。

「その部分は気を使いました。先ほどの帰り道みたいなシーンは、けっこうラフにやっていましたけど、ふたりの距離感については密に話して、チェックしました。でも妻夫木くんはそんな部分の理解力が長けているので、苦労にはならなかったです。彼の魅力は全体を見ることができて、かつ自分の役割をシャープに的確に体現できるところ。一方で、豊川さんは自分が演じる島に対してとことん向き合い追求する俳優さんで、彼が持つ空気感によってその存在を作り上げる人なんです。演技のテクニックがまったく異なるふたりが、作品の中でひとつになっていくお芝居は、非常に見応えがあると思います」

 

……ご自身で音楽を監修しつつ、坂本龍一さんも劇中のテーマ曲でご参加されていますが、どう言った経緯で?

「作曲家の先輩であり、もう20年来の付き合いになりますが、前にパリで対談したことがあって、坂本さんから「僕ができることがあったらやるよ」と言っていただいて、僕も「絶対にその言葉忘れないですからね」となったことがあったんです。今回の映画で、「これぞ、映画音楽だ」と思えるくらいロマンのある曲を入れたいと思ったので、それを作れるのは僕が知りうる限り、坂本龍一さんしかいないと思って依頼したら快諾してくださって。でも怖かったですねー。実は3回くらいダメ出ししたんですよ、坂本さんに(笑)。もちろん曲は素晴らしかったんですよ。でも僕はもっと「これぞ、坂本節だ!みたいなのが欲しいです」って何度も作り直していただいて。そしたら送ってきた音源に「半野くん」と書かれていて。もはや監督でも何でもなく、ただの後輩に送ってくる感じで(笑)。その先を読んでみると「これがボツったら、俺マジで切れるからね。坂本」と書いてあって。もう本当に怖いから2、3日聴かずに寝かせてました(笑)。その間、プロデューサーにもこれを聴いてダメだったら、坂本さんは本当に降りる可能性あるから覚悟しておいてくださいと話して。意を決してそれを聴いたら、本当に素晴らしかったので、「これで、よろしくお願いします!」とホッとしました(笑)」

 

……坂本さんの楽曲もそうですが、シーンを繋ぐ音や心情に寄り添う音楽があることによって、物語に深みが加わっているように感じました。

「そこはこだわりましたね。伏線を丁寧に回収するような映画でもないから、シーンの色や風景の美しさ、そして役者のリアリズムをかなり高い次元でクオリティを上げていきつつ、そのレベルに合わせた音楽で表現していかないと

観てもらえなくなるので。だから、その部分は最初から最後まで一切妥協せずに臨んでいました。そういう意味では、劇場のスクリーンとサラウンドの音響で、ぜひ楽しんでほしいです」

 

……「生きるとは何か」という普遍的なテーマに込めた想いとは?

「人って誰もが生きて、そして死ぬじゃないですか。その中で描きたかったのは“自由”なんです。生きることの自由さって僕たちが勝ち得た相当大きな財産だと思うんです、自分で何かを決められると言う。何が正しいとか、正しくないではなく、ダメな男ふたりが最後に自分で決めた選択自体、こんなに自由なことはないんだと。だからこそ自由に選択ができない理不尽な出来事と対比させることで、より現実的に自由であることの重みが増すと考えました。でもそんな説教じみたことじゃなく、気軽にダメな男たちのダメな物語として観ていただいて、何かを感じていただけたら嬉しいです。」

 

……それでは最後にメッセージをお願いします。

「この映画は真夏の台湾で撮影した映画で、ぜひその異国情緒のある空気を登場人物と一緒に体感してもらえたらと思っています」

 

 

 

main

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

STORY

世間から身を隠すように台北で生きる男・島(豊川悦司)の前に、突然お調子者で馴れ馴れしい男・牧野(妻夫木聡)が現れる。牧野は初めて会う島の名前を知っており、島が台湾にやって来るきっかけになった“ある事件”のことを知っていると言う。その牧野が何者かに命を狙われていることを知った島は、追手から逃れるため牧野を連れて台北から花蓮へ向かう。花蓮に辿り着いた二人の前に、シャオエン(ニッキー・シエ)という女性が現れる。この運命の出会いによって、牧野と島の閉ざされた過去が明らかになり、二人の逃避行は楽園を探す旅に変わっていく…。

 

『パラダイス・ネクスト』’19年/日・台/100分

監督・脚本・音楽:半野喜弘

音楽:坂本龍一

出演:妻夫木聡、豊川悦司、ニッキー・シエ、カイザー・チュアン、

   マイケル・ホァン、大鷹明良

※9/7(土)よりKBCシネマにて期間限定公開(9/13(金))

※9/13(金)より小倉コロナシネマワールドにて期間限定公開(9/26(木))

http://hark3.com/paradisenext/

 

Ⓒ2019 JOINT PICTURES CO.,LTD. AND SHIMENSOKA CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED


PR
2019.9.20号
monthly cover artist
デジタルブックを立ち読みする
  • facebook
  • twitter
  • instagram

フライング・ポストマン・プレス HOME

fppshop
FPP×AFRO FUKUOKA