エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス 福岡版

2018/09/27

「おいしいごはんと、いとしいセックスで」(食と性)で映し出す女性の本能。映画『食べる女』原作者の筒井ともみに迫る。

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脚本家として活躍する筒井ともみが自身の著書「食べる女」の企画、脚本、プロデュースを手掛け映画化。恋や仕事に奔走する8人の女性たちの日常から恋愛観を、食とセックスを通じて映し出す。主演に小泉今日子を迎え、沢尻エリカ、前田敦子、広瀬アリス、山田優、壇蜜、シャーロット・ケイト・フォックス、鈴木京香ら豪華女優陣が共演する話題作。原作者であり、本作を手掛けた筒井ともみ自身にこの映画化への想いを訊いた。

 

 

……原作者である筒井さんが企画・脚本・プロデュースまで務められた理由をお聞かせください。

「一言でいえば成り行きなんですが(笑)。原作が最初に出た頃、いくつか映像化のお話をいただいて、脚本段階くらいまでは進んだのですが制作会社が求めていたのは「セックス・アンド・ザ・シティ」みたいなものだったんです。そこがすごく違ったので、私から止めちゃったんです。それから色々とありながら、もう一回仕切り直して今の脚本にして。小泉さんに関しては、もし映画化する時は仲間になると言ってくれていたので、彼女の名前も入れて今度はテレビ局にも持ち込みました。でも視聴者に「分かりにくい」という理由で、すべての地上波に断られまして。今のドラマ界も日本映画界も「分かりにくい」というのがネックで、主人公が苦労して栄光を掴むストーリーや、ハッピーエンドの分かりやすい物語じゃないと伝わらないと言われましたね。ルーティン通りに」

 

……それから映画化の話になった訳ですね。

「ふとしたことから東映さんと縁ができて。それからキャスティングに入って、主演は小泉さんに決めていたので、それ以外の女優さんを探しました。周りからは「(今回の豪華な女優さんを集めるのが)大変だったでしょう?」とよく言われますが、案外すんなり集まりまして。すべてのテレビ局に断られたこととは対極のようでした(笑)」

 

……それぞれの世代の女性がリアルに描かれた共感できる作品でした。

「それぞれの世代での価値観の見せ方にはそんなに苦労はしていなくて。それよりも私はどの物語でもそうだけど世界観の概念がないと、映画の脚本が書けないので。今回は地球(テラという星)が抱いている水の気配から始まって、小泉さん扮する敦子(トン子)が住む古書店“モチの家”をサンクチュアリに、そこから月へと繋がっているようなイメージで。そこには死者も生者も存在しているし、古本屋というのは過去と未来を繋ぐ言葉を扱っている。そういった世界観の概念を創り上げて、私が書いた原作にいる4〜50人の女性の中からふさわしい人を集めてきました。だけど小泉さんが演じた主人公は原作にはないんです。彼女の役はサンクチュアリの番人としていたほうが良いなと思いまして」

 

……小泉さんが演じたトン子の母性感がすごく伝わってきました。

「今回の小泉さんの存在感は素敵だと思いましたね。日本映画の中では分かりやすいお芝居じゃないけど、さりげなく自然体でしなやかに演じてもらえました。海外での方が評価されるんじゃないかしら」

 

……小泉さんは決してセリフが多い役ではありませんでしたが、一つひとつ印象に残る名言が多かったです。

「いつも脚本を書く時は、仮に不思議な物語であっても、セリフは魂に直結したものでありたいと思っていて。セリフはその人物の魂の吐息ですから、説明ゼリフにならないように。それが時々分かりづらいと言われることもありますけど(笑)」

 

……全然そんな事なかったですよ(笑)。その中で特に苦労されたことは?

「やはり短編小説を一本の映画にするのは難しかったですね。それを繋ぎ合わせるのが、先程お話した世界観の概念ですね」

 

……その中で生まれたキャラクターで、ユースケ・サンタマリアさんが演じた冴えないサラリーマンの個性は斬新で非常に楽しめました。

「あのキャラクターは日常にはいないタイプですね(笑)。でも、食べ物の名前だけを言いながらベットシーンをやりたかったことと、絶対に落ちない女性がそんな男性に惹かれていく様を見せたかった。以前、制作会社の女性スタッフたちと話をしていて「とりあえず小さなマンション買っちゃいましたよ!そうすれば後は自分の好みで男性を選べますから」というのが中々リアルだったので参考にさせてもらいました(笑)」

 

……ちなみに今作で男性の生野慈朗さんに監督をお任せされた理由は?

「生野さんとは昔からのお付き合いで、彼の初プロデュース作品も私が脚本を書いたのですが、この映画でいきなり新しい方とやって、この8人の女性像を短期間で作り上げるのは大変だと思いまして。だから監督選びは非常に考えましたが、生野さんがやると、セックスがスポーティになるだろうなと思いました、昔からの仲だから繊細なニュアンスも伝わるかなと感じまして、彼に撮ってもらいました。小泉さんとも私以上に付き合いが長いので」

 

……それでは最後に本作の楽しみ方を教えてください。

「観終わった後、「美味しいものを食べようかな」とか「誰か好きなってみようかな」、お付き合いしている人は「ちょっと優しくしてみようかな」とか、食べることを起点に何気なく過ごしている日々をもっとフィジカルに感じてほしいです。そして自分に「今、何を食べたいの?」という問い掛けをしてほしいし、何を食べたいかを感じられる人になってほしいと思います。最終的に「あなたはどんな世界を望みますか?」ということにも通じてくる。女たちが食べることから始めるささやかなレボリューションの映画として成り立つと良いなァと。この作品を観て、その手触りみたいなものを感じてもらえると嬉しいです。映画を観終わった後は、ぜひ気合をこめて何が食べたいかを想像して、おいしいものを食べに行ってほしい、そんな映画です」

 

 

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STORY

トン子(小泉今日子)は、古書店を経営しながら雑文筆家としても活動している。古びた日本家屋の一軒家で暮らす彼女は、女性たちを招いておいしいものを好きなだけ食べる宴を開く。風采の上がらない中年男性との関係に戸惑う圭子(沢尻エリカ)、何かが足りない恋人に求婚されたことを悩む多実子(前田敦子)、恋愛で失敗ばかりしているあかり(広瀬アリス)らが集まり、敦子が振る舞う料理に舌鼓を打つ。

 

『食べる女』’18年/日/111分

監督:生野慈朗

原作・企画・脚本・プロデュース:筒井ともみ「食べる女 決定版」(新潮文庫刊)

出演:小泉今日子、沢尻エリカ、前田敦子、広瀬アリス、山田優、壇蜜、シャーロット・ケイト・フォックス、鈴木京香、他

※9/21(金)より全国公開(PG12)

http://www.taberuonna.jp/

 

Ⓒ2018「食べる女」倶楽部


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