エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス 福岡版

2018/06/16

カンヌ最高賞・パルムドール受賞作『万引き家族』に込められた想いとは?

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『誰も知らない』、『そして父になる』などの是枝裕和監督による最新作。世界三大映画祭のひとつ、カンヌ国際映画祭で約9分間のスタンディングオベーションで大絶賛され、見事、最高賞のパルムドールを受賞し、日本中を湧かせた話題作が6/8より絶賛公開中だ。家族を描き続けてきた是枝監督が“家族を超えた絆”に挑んだ衝撃の人間ドラマ。血縁を超えた、その先にあるものとは何か?満を持して来福した是枝監督、そして主演を務めたリリー・フランキーが語る『万引き家族』への想い。

 

……そもそもの着想は年金の不正受給からと聞いていますが。

是枝「元々は、家族を繋ぐ者は“血”なのか、“過ごした時間”なのか、その二者択一を迫るようなテーマだった『そして父になる』の直後に、その先の問いかけを考えるようになって、血縁を超えて繋がっていく家族の話を描いてみたいなと。それと養子縁組や里親制度って日本では中々広がっていないこともあって、血を超えた共同体としての家族を作ろうとしている人たちの話をやろうと思いました。ただ、それが、ただの優しいだけで繋がっていることじゃない方が良いなと思っていたところに、年金不正受給の詐欺事件に触れたこともあり、見ず知らずのお年寄りの年金を頼りに人が集まって、金目当てだけど家族に見えるような発想になりました。その時には既に、樹木希林さんとリリー・フランキーさんの顔が浮かんでいましたね(笑)」

 

……リリーさんはそのオファーを受けてどんな心境でしたか?

リリー「最初に台本になる前のプロットをいただいて、純粋に素晴らしいなと。もうその段階で、心が震えましたね。例えば、今のニュースで知る報道で、表面的な部分だけを捉えて何かあったら100%アウトとして断罪し続ける傾向があるじゃないですか。それはニュースだけじゃなく、世の中的にもそうなってきている。でも一番見逃しちゃいけない、そこに至った理由や背景は見ようとしない。この映画は是枝さんらしいし、是枝さんしか見ようとしていないもののようでした」

 

……印象的だったのが、花火の音だけが聞こえる場面でみせた信代(安藤サクラ)が子供を抱きしめるシーン。親としての覚悟を見る思いでした。

是枝「信代がりんの受けた虐待の痕を風呂場で見たことで、抱きしめて母親になる決意をしたんだと思います。それは信代自身も自分の過去を抱きしめている感じがしましたね」

 

……祥太、りんを演じた子役のふたりが見事なお芝居でしたね。監督からお芝居について話されたことはありますか?

是枝「感情の説明などは、ほとんどしていないですね。あの子(城桧吏)は、(その感情の部分を)捕まえてきますから」

リリー「撮影も後半に入っていくにつれ、桧吏君自体が成長していって。台本は持っていないけど、周りの人のお芝居を見て自分がどう受けていくべきか、をちゃんと理解していましたね」

是枝「完全に(お芝居の)セッションに参加してきている感じでした」

リリー「あの歳で、あの感覚の“受け”の芝居ができることってすごいことですよ」

 

……その父・治を演じられる上で、何か監督とお話しされたことは?

リリー「特に話はなく、クラインクインする前にお手紙で「このお父さんは、ただのデクの坊で最後までまったく成長しません」と書かれてあって(笑)。それでどうやったらデクの坊になるんだと考えましたけど、「あ、このまんまで良いんだ」と (笑)。子供と遊んでいるように万引きをしている、いつも“ごっこ”の人。そのくせ、仕事場では一言も喋らないような。もう彼にはあそこ(家)しかないみたいなお父さんですね」

是枝「でも成長しないことで、周りが成長していくんです。特に祥太はその成長しないお父さんを超えていく。そして治は子供に超えられたことで、ようやく父親になるんだ、という文脈を書いていました」

 

……リリーさんはこの血縁ではない家族をどのように捉えられていましたか?

リリー「プロットの段階から憧れるものがこの家族にありました。もちろん貧しいんだけど、ちゃんと身の丈で生きている。だって、夏に湯がいたトウモロコシと発泡酒があって、花火が見られなくても音だけであれだけ楽しめることって、これ以上の幸せはないのかなと。でも(人は)これ以上を求めるから、また色んなことを抱えてしまう。見ていてすごく清潔感のある、血の繋がりはなくても温かいものを感じられる家族だなと思いますね」

 

……パルムドールを受賞して、周囲の反応はいかがですか?

リリー「監督も決して賞を取るために映画を作っている訳じゃないけど、結果的にパルムドールを取ったことで、上映館数が増えたんですよ。僕は小倉出身ですが、元々は小倉では1館も上映されない予定だったんですが、急きょ小倉だけでも3館に増えたんです。まさか小倉がパルムドールにそんな反応を見せてくれるとは予想もしていなかったんですけど。でも賞を取るということはたくさんの人に観てもらえる機会になるので、それはすごく嬉しいことだなと思いますね。それと先行上映で観た福岡の友人も「今、自分の中で咀嚼できてないから、もう一回観て考えたい」みたいなことを言ってましたが、僕は良い作品って、映画館で観終わった瞬間に「この後、何食べる?」みたいな会話にならないと思うんです。鑑賞後に1分でも自分の過去を省みたり、ちょっとでも自分の人生や生活に映画から感じたものを重ねたりするものだと思うんです。だから、そういった感想を持たれたことは、すごく嬉しかったですね」

 

 

 

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STORY

高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく──。

 

『万引き家族』’18年/日/120分

原案・監督・脚本・編集:是枝裕和

出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城 桧吏、佐々木みゆ、高良健吾、池脇千鶴/樹木希林

※大ヒット上映中

http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/

 

Ⓒ2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.


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