エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス 福岡版

2018/02/23

「あの花」「ここさけ」の脚本家、岡田麿里 初監督作「さよ朝」の魅力

名称未設定 

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』脚本の岡田麿里、初監督作で贈る一大感動巨編『さよならの朝に約束の花をかざろう』。彼女が「作りたい作品がある」と自ら志願し、あらゆる世代の人生を映し出す“出会い”と“別れ”を描いた珠玉の物語。その意欲作に臨んだ岡田監督、さらに彼女の意志を支え続けたプロデューサーの堀川憲司氏が語る「さよ朝」への想い——。

 

……アニメーションの域を超えた人間ドラマが凝縮されていましたが、近年、脚本で携わられてきた作品とは異なり、ファンタジーを舞台設定にした理由は?

岡田「アニメーションに関わっている身としては、オリジナルって憧れの場所でして。そこで監督をやらせていただけるのであれば、自分が子供の頃にドキドキしたような劇場アニメを作ってみたいなと思いました。観ていて心が持っていかれるような映像の快感、そんな物語の世界に入っていけるような作品を考えると、やはりファンタジーでやってみたいと思いました。これまでは思春期の少年少女を描く機会が多かったですが、どうしても踏み込めない感情や人間関係があって、そこを書いてしまうと、ちょっと生臭くなってしまうんです。アニメに合う感情とそうでない感情があって、今作のような親子関係だと人間の本質的な部分も必要になるんですが、現実世界で書いてしまうと“食い合わせが良過ぎて悪い”という感じに陥ってしまうんです。ちょっと重めな内容や関係性をファンタジーで描くことによって、現実との地続き感はありながら、世界に入って行きやすく、さらに新しいものになるのではないかと考えました」

 

……そんな深遠でありながら、普遍性もあるこの物語の原案はいつ頃から持たれていたのですか?

岡田「最後の部分の構想までありませんでしたが、時の流れと人の関係の変化というものがすごく好きで、時間によって許されていくものもありますが、時に暴力的な力もあると思うんです。その厳しい状況で人間関係の変化を描きたいということが最初にありました」

 

……初めてメガホンを取られてみて、これまでとの違いはどのあたりでしたか?

岡田「脚本ってひとりでの作業ですし、映像制作におけるトップバッターとしてやることも多いけど、一抜けなんです。その後はすべて監督にお任せして現場のスタッフたちと作り上げていくので、脚本家の仕事としては、その後のことは監督の判断に任せるところが多いんです。例えば「少し目を細めて笑う」とト書きにあっても、それが企んでいる様子なのか、穏やかに微笑んでいるようなのかは分からないし、仮に詳しく「穏やかに」と書いてしまうとその捉え方の違いで意図が変わったり、伏線にならなかったりすることがあるんです。でもそれは共同作業の中の分業における宿命的なもので、逆にそれが思い掛けない化学反応を起こしたり、良さでもあったりするんです。今作では、自分が本当にやってみたいことを考えた時に、やはり私は現場のスタッフとものづくりをしたいと強く感じました。表情の変化やセリフひとつとっても、一緒に話し合いながら作っていきたかったし、背景にしても感情と空の色を合わせること、光や音の感じや声優さんなどのすべてにおいて現場の一員として携わっていくことで、今まで表現できなかったことが実現できると思いました」

 

……具体的にはどんな表現力になりましたか?

岡田「例えば、表情などが狙っていたところにはまれば、セリフはそんなに重くしなくても、シンプルな言葉で感情が伝わると思うんですけど、共同作業では限界があります。でも、今作の脚本では、あえて感情を不親切に書いていて、それを表情や景色、音などで伝えていくというのが、アニメっぽくないようで、アニメでしかできないことだと捉え、挑戦した感じです」

 

……監督という視点で改めて感じたアニメーションの魅力とは?

岡田「偶然って存在しないから、表に出る良さってやはり人の努力や熱量だけなんです。今回はスタッフの皆が真摯に向き合って、熱のこもった作品に仕上がっていますし、もちろん人それぞれのバイオリズムがある中での共同作業なので、「(作品も)生き物だな」と実感しました。最終的に納得できる、自分でもすごいなと思える作品になったので、初監督で素晴らしいスタッフに巡り会えたことはすごく幸せなことですし、感謝しかありません」

 

……堀川さんは岡田監督と脚本家時代からのお付き合いですが、最初に「岡田さんのすべてをさらけ出した作品を観てみたい」と思われたのは、なぜですか?

堀川「冒頭に「アニメーションの域を超えたドラマ性がある」とおっしゃられましたが、それは僕も同じことを感じていました。普段の打ち合わせなどでアニメーションの枠に収まりきれない、もっと荒ぶるものを内面に持っているけど、アニメゆえにセーブしていることを感じたんです。でもあえてそのタガを外したらどんなものが出てくるんだろうという興味があり、アニメーションファンだけでなく、もっとその枠を飛び越えて開放したものを作ってほしいという想いから一緒に進めていきました」

 

……実際の現場でそんな岡田監督らしさを実感することはありましたか?

堀川「人が何を考えているかを物語として想像することを脚本家として持っているので、例えば今クリエイターが何に行き詰まっているのかを実務よりも内面のフォローができる方なんです。彼らの悩みを聞いてサポートしたり、逆に良い部分を上手に引き出したり。その内面的なアプローチがずっと人を描いてきた監督らしいなと思いました」

 

……そんな内面的なアプローチが、キャラクターの繊細な感情に繋がっているように感じました。

岡田「人の感情は表と裏があるのではなく、綺麗なものと汚いものが同時にあって、今どちらにフォーカスされているのか、だといつも思うんです。でもアニメだと分かりづらいから、どうしても表と裏の考え方になっちゃう。でも実際の人間って表も裏も同時にあって、それをアニメで可能にするのは表情や仕草、何よりキャラクター性だと思うんです。ファンタジーだからこそ、その表現が強調できた部分もあるので、逆に実写だと難しいと思います。アニメだからできることを、スタッフみんなが追及してくれたと思います」

 

……岡田監督が今作で、最も大切にしようとしたテーマはどんなところでしょうか?

岡田「母と息子の物語ですが、実は親子ものという意識をそこまで持たず書いていて、主人公のマキアは親がいないから、自分でひとりぼっちと思っている子だけど、言い換えれば、強い結びつきを求めているひとりなんです。人間関係って恋人でも夫婦でも解消できるけど、親子は解消できない。だからマキアはエリアルを拾った時に息子だと思い込むことで、ずっと一緒に居られる関係値にしている。でもそれが息子への愛なのか、ひとりになるのが怖いからなのか、美しい気持ちと恐怖の気持ちが綯交ぜだと思うんです。そういう何かが足りないと思っている人たちが、その何かを大切にしようとすることや、守りたいものがある時点で、すでに手に入れていることじゃないですか。そんな何かが欠落した人が大切なものを手にした時に恐怖と向き合う姿を描きたいと思いました。マキアの母親として理想的に見える面と、そうではない面を両方持ち合わせた姿って現実的にもあるのかなと。必死になっているときって、どうしても考えが頑なになりがちで。だから正しい気持ちも、ラフに考えた方が良い気持ちも全部一緒になって“一皿にある感じ”を書いてみたかったし、それは監督をやらせていただいたからこそ実現できたことなので、この機会が本当にありがたかったです」

 

……最後にプロデユーサーという目線で、堀川さんはどんな作品に仕上がったと感じていますか?

「アニメーションの枠を超えた、今まで以上に岡田麿里らしさが溢れる作品になりました。人間が本来持っている感情でも、かなり深層にあって中々表現しづらい部分も描いている映画になっていると思います」

 

640

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

STORY

10代半ばで外見の成長が止まり、数百年生き続けることから「別れの一族」と呼ばれるイオルフの民の少女マキアと、歳月を重ねて大人へと成長していく孤独な少年エリアルの絆の物語。人里離れた土地で、ヒビオルと呼ばれる布を織りながら静かに暮らすイオルフの民の少女マキア。ある日、イオルフの長寿の 血を求め、レナトと呼ばれる獣にまたがるメザーテ軍が攻め込んできたことから、マキアとイオルフの民の平穏な日々は崩壊する。親友や思いを寄せていた少年、そして帰る場所を失ったマキアは森をさまよい、そこで親を亡くしたばかりの孤児の赤ん坊を見つける。やがて時は流れ、赤ん坊たったエリアルは少年へと成長していくが、マキアは少女の姿のままで……。

 

『さよならの朝に約束の花をかざろう』’18年/日/115分

監督・脚本:岡田麿里

声の出演:石見舞菜香、入野自由、芽野愛衣、梶裕貴、沢城みゆき、細谷佳正、佐藤利奈、日笠陽子、久野美咲、杉田智和、平田広明

アニメーション制作:P.A.WORKS

※2/24(土)よりT・ジョイ博多、他にて公開

http://sayoasa.jp/

ⒸPROJECT MAQUIA

 

 


PR
2018.5.20号
monthly cover artist
デジタルブックを立ち読みする

フライング・ポストマン・プレス HOME

fppshop
FPP×AFRO FUKUOKA