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フライング・ポストマン・プレス 福岡版

2017/06/28

向井理の祖母の手記を映画化。夫婦初共演の尾野真千子、向井理が来福

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俳優・向井理が祖母の卒寿のお祝いに、家族や親戚と自費出版して贈った祖母の手記を、向井自ら映画化に向け7年の歳月をかけ企画した意欲作『いつまた、君と 〜何日君再来〜』が絶賛上映中。主演の祖母・芦村朋子役に尾野真千子、その夫で実の祖母・吾郎を向井自身が演じる。脚本は、向井理の俳優として転機となったNHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の脚本家・山本むつみ。監督には、『60歳のラブレター』など実話を基にした物語を、繊細かつ丁寧に演出し味わい深い作品を残してきた深川栄洋。祖母の手記から始まり、映画化へと発展し紡がれたのは、時代や世代を超えても共感できる普遍的で壮大なラブレター。夫婦役としては初共演となるふたりに本作への想いを訊いた。

 

……向井さんが祖母の手記を発見されてから、今回の映画化に至るまでどういった経緯だったのでしょうか?

向井「7年前、当時「ゲゲゲの女房」を撮影をしていて、その時の台本がすごく素敵で、手記は大学時代に出版していたので、「こういう話も自分の家族の中であったな」と思い返して。その時にはもう映画化したい思いがあったし、構想自体はもっと前からありました。それで当時「ゲゲゲ」の脚本家でもあった山本むつみさんに手記をお渡しして、「いつか映画化する時は、ぜひ書いてください」とお話ししたのが最初です。それから色んな作品に出るようになって、ある制作プロダクションの方と出会った時に、手記自体は半生を記したものですが、その後の僕が生まれて今ここに至るまでの話も子孫として付け加えたところ、興味をいただいてそれから監督や脚本家を一緒に考える中で、監督は深川監督をご指名させていただいて、脚本家は書いてほしかった山本むつみさんへすでに渡していたので、正式にオファーをしていただきました」

 

……深川監督は人間ドラマを繊細に描かれる方ですが、戦後を描く作品自体は初めての試みでしたね。

向井「今まで深川さんの作品を観てきて“ヒューマン”な部分を繊細に撮られる方だなと思っていました。それと、以前仕事でご一緒した時にすごく情熱があって、でもそれを内に秘めてる感じで。その静かに淡々と語りかけてくれる言葉の端々に映画に対する熱意や愛情をすごく感じる方でしたし、年齢的にも自分とあまり離れていない同世代の若い監督と、戦後の映画を残したいと思っていたので、深川監督にお願いしました」

 

……向井さんの祖母・芦村朋子役の尾野さんは、包容力に満ち溢れるような演技が印象的でしたが心掛けたことは?

尾野「はじめに向井くんから「おばあちゃんはいつもニコニコしている人だった」と聞いて、自分の居方が導かれたような気がして、温かく家庭を包んでいた人だったことが確信できたので「そういう人でいよう」と、ただそれだけでした。あとは向井君を見て、子供たちを見て感じたことをそのまま表情にしたり、行動できたりしたので、周りの皆に作ってもらった感じです」

 

……尾野さんが演じるにあたって、ご自身で意識されたことはありますか?

尾野「私は感じたものをやりたいと思っていました。本番どう言われるかわからないけど、私は誰かに似せて演じることはしないので「頼むから何も言わないでくれ」と念じながらやっていたら、本当に何も言われずで。だから向井君のお芝居を受けて感じたまま演じさせてもらえたので良かったです。もちろん、包容力の大きさに信じられない気持ちもありますよ(笑)。でもうちの母が、家族のためだったら自分はどうでもいいという昭和の女性らしい考えだったので、違和感がなかったんです。自分は母のようにはできないけど、母の振る舞いが手本になりました」

 

……朋子さんとご自身が重なるような共通点はありましたか?

尾野「吾郎さんが仕事に失敗したり、病気したりするけど、ふとした楽しいシーンを撮っている時に、本当に幸せな気分になれたんです。それは自分に通じるものがって「この人となら楽しい芝居ができるかも」と生身の尾野真千子が向井君に思ったように、朋子さんも、どんなに大変な時でも笑わせてくれたり、家族を守ってくれたりする吾郎さんが頼もしかったんだなぁと朋子さんに共感していました」

 

……夫の吾郎さんの度重なる不運で、妻として非常に辛い場面が度々ありましたが、それを支え続ける包容力が演技に滲み出ていましたね。

尾野「大変なシーンでも微笑ましくて、向井君子供たちを見ているだけでそういう気持ちになっちゃうんです。辛い顔ではなく笑顔になれる。でも正直な人だから泣く時は泣くし、本当に辛い時はそう思っているんですけど、子供たちの楽しんでいる顔や吾郎さんが笑わせようとする姿に、自然と楽しくなってそんな辛い気持ちじゃいられないと。でも、それだけ吾郎さんが魅力的な方だったんだと思います。辛い時でも付いていけば何かワクワクしたものがあるという期待があったんだなって」

向井「劇中に、吾郎が車を買って運送業を始めるけどうまくいかなくて、勝手に車を売ってそのお金で酒を飲んで帰ってくるシーンがあるんですけど、実はその後にカットされているシーンがあって。吾郎が帰ってきて、引き取られていく車をひとりでもくもくと雑巾で磨いていると、朋子が来て手伝うシーンがあるんです。そんな物に対する感情や感謝している姿が、どこか可愛くて魅力的なんだと思います。だから…(シーンが)無くなってたなぁって(笑)。たぶん実直なんです。物事に対して真面目で、朋子に勧められた闇市にも行かないとか当時では考えられない訳ですよ、それで食べ物が無くて餓死する人もいる時代ですから。それくらいのことをやってしまう真っ直ぐさが、高潔なんでしょうね。だから男としては尊敬できるけど、一家の主としては「困ったもんだな」と(笑)。でも、その両方あるのが魅力なんだと思います」

 

……戦後の大変な時期の母を演じられて、特に心に残っているエピソードはありますか?

尾野「これだけ貧しい時代なのに、気持ちが幸せでいられることが不思議でした。現代に生きる私たちは物がないとか、食べ物がないってだけでイライラしたり、人と争ったり、こんな気持ちになれないと思うんです。でもこの時代の人たちは、無いのが当たり前な中で、協力し合いながら幸せの価値を得ていたんだなぁと学ばせてもらいました」

 

……吾郎さんや朋子さんを演じてみて、特に見習いたいと思ったのはどんなところでしょうか?

向井「この作品を通じて支えてくれる人がいるって素敵だなと思いましたが、それと同時に支えてあげたいと思われる人にならなきゃいけないんだなと思いました。だから「ああいう女性が良い」とか簡単に言ってはいけないなと(笑)。自分がまずそう思われるような男になってからだと思います。だから時代とか関係なく、ダメならダメでしょうがないかもしれないけど、がむしゃらに努力する姿や前向きな姿勢を持ってないと応援してもらえないと思うので。簡単ではないかもしれないけど、そういう人だからこそ支えたいと思われたんだろうなと実感しています」

尾野「全部見習いたいです。自分にないことばっかりだったので、すべてメモして勉強したいです(笑)。きっと今の自分にはできそうにないけど、ひとつくらい愛している人にできることは必ずあると思うので、朋子さんを見習って見つけたいです」

 

……全編を通して男女の愛はもちろん、人として誰かを慈しむような普遍的な愛を感じられましたが、映画を通じて改めて感じたことはありますか?

向井「映画は朋子が脳梗塞で倒れる場面から始まりますが、実際は退院した時に祖父について一言「愛している」と言っていたんです。だから、こうやって映画化を経て終わってみると、“壮大なラブレター”だったのかなと今は思っています」

 

 

 

いつまた、君と:メイン s

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

STORY

81歳になった芦村朋子は、不慣れな手つきでパソコンにむかい、亡くなった夫・吾郎との思い出を手記として記録していた。しかし、朋子は突然病に倒れてしまう。そんな朋子の代わりに、孫の理が『何日君再来(ホーリージュンザイライ)』と題された祖母の手記をまとめていくことに。綴られていたのは今まで知ることのできなかった、戦中・戦後の困難な時代を生きてきた祖母・朋子と祖父・吾郎の波乱の歴史と、深い絆で結ばれた夫婦と家族の愛の物語だった…。

 

『いつまた、君と 〜何日君再来〜』’17年/日/114分

監督:深川栄洋

原作:芦村朋子「何日君再来」

出演:尾野真千子、向井理、岸本加世子、駿河太郎、イッセー尾形、成田偉心/野際陽子

※T・ジョイ博多、他にて絶賛上映中

http://itsukimi.jp/

©2017「いつまた、君と 何日君再来」製作委員会

 


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