エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス 福岡版

2017/05/31

映画『ちょっと今から仕事やめてくる』成島出監督が来福。

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 “働く人”の共感を得て70万部を突破したベストセラー小説を、福士蒼汰主演で映画化した『ちょっと今から仕事やめてくる』がついに公開。「長時間労働」「パワハラ」「自殺」という今の時代に即した重いテーマを扱いながらも、それを乗り越える勇気と活力を与えてくれる感動の物語。監督を務めるのは『八日目の蟬』、『ソロモンの偽証』など数々の話題作を手掛けてきた成島出。監督自身の思いを交えながら、本作について語ってもらった。

 

……現代社会のブラック企業における辛い部分と、救いになる部分の描写のメリハリがすごく効いていたので伝わりやすく、共感できましたが、そういった強弱を持たせる意識はありましたか?

「そうですね。そこはやはり意識しました。この話の裾野を広げたかった思いもありましたし、原作の重い部分から逃げたらダメだと思いました。自殺を考えるまで追い込まれるドラマなので、ちょっとヘビーになってもきちんと描き切ることが大切だし、その闇が深いからこそ光の中に飛び出していく時に解放感があることを信じて作ろうと考えました。もちろん怖さもありましたけど、今のところは好意的に受け取ってもらえているので良かったです」

 

……そのヘビーな部分を伝える上で欠かせなかったのが、山上部長役の吉田鋼太郎さんの圧倒されるような存在だと感じましたが、特に吉田さんとお話しされたことはありましたか?

「我々の世界でもああいったタイプの先輩監督は大勢いましたし、吉田さんの師匠は、蜷川幸雄さんというとても厳しい方でしたので、特別なことをするというよりは、その感覚を持って演出しましたし、吉田さんと相談しました。裏設定として山上部長は自衛隊出身で、すごく礼儀正しいし体育会系だから実は社長などの上司にはウケが良くて可愛がられる部長。だから本人からすれば愛の鞭のつもりなんだけど、残業続きで部下と飲みにもいけずコミュニケーションも取りづらくなって、ただ厳しいだけに見えてしまう。そんな孤立している感じは意識しました」

 

……そして、救いとなる謎の男・ヤマモトを演じたのが主演の福士蒼汰さんですが、今作で大阪弁に初挑戦されていますが、監督ご自身に不安はなかったですか?

「僕もあったし、福士くんもあったと思いますけど、やっぱり俳優だから大阪弁をやる以上はちゃんとやりたいと彼も意気込んでいました。特に大阪弁は皆の反応が厳しいから不安もありましたけど、撮影に入る5ヶ月前からトレーニングできたことがよかったです。また、通常は大阪出身の俳優によって方言指導を行うのですが、プロデューサーのアイデアでよしもと芸人・烏龍パークの加藤さんに方言指導をしてもらったことで単純なイントネーションだけではなく、大阪漫才のボケとツッコミだったり、間だったり、ノリや強弱とかまで教えていただいて、結果的にすごく成功したと思います」

 

……ブラック企業で働くサラリーマン青山を演じた工藤阿須加さんは自殺を考えるほど追い込まれた演技と、ヤマモトとの出会いで新たな自分を見出していく二面性のあるお芝居が求められたと思いますが、監督からアドバイスされたことはありますか?

「アドバイスではないですが「そういうお芝居を表面的に作るのはやめようね」という話はしました。それはヤマモト、青山の両方に言えることですが表面的に小手先だけでやると嘘臭くなって、クライマックスで迎える魂の解放みたいなものが薄っぺらくなるので、うわべでお芝居をやるのは一切やめようと」

 

……工藤さんにはスーツを着慣れさせるため、一時期ずっとスーツを着てもらっていたとも伺っていますが。

「最初から最後までずっとそうでしたね。撮影でも最初に自分でリクルートスーツを買ってもらって、通勤電車に乗ったりしながら馴染ませていって。最後の撮影でもそれを着ているシーンが結構ありますよ。スーツってやはり着慣れていないと、スーツに着られているように見えるので (笑)」

 

……ヤマモトは逆にアロハシャツ姿が印象的で。こちらもすべて手染めの一点物と伺っておりますが。

「衣装を決めていく中で、原色系が良いだろうとなったのですが、意外に日本の生地ではないんですよ。だったら染めた方が早いからということで、ヤマモトのイメージに合う鮮やかな色にスタイリストが染めながら探っていきました」

 

……クライマックスに進むにつれ、原作と違ったアプローチでエンディングを迎えるようにした理由をお聞かせください。

「やはり映画なので、“映画的に始まり、映画的に終わりたかった”という思いからです。最初にプロデューサーから夜空の星やアフリカの写真を見せてもらって、それをどう取り入れていくかをまず考えながらストーリーを作っていきました。魂の解放をより深く描きたかったし、今の日本が失いかけている豊かさみたいなものが映画らしい画として映し出されています」

 

……それ以外に特に監督がこだわられたシーンは?

「どのシーンにもこだわりはありましたが、青山の会社のシーンでいうと音にはこだわりました。中央線と総武線の間にあるビルという設定でしたが、前半の追い詰められる時には重低音を響かせて居心地の悪いちょっとしたホラー映画のような響きにして、それが青山の気持ちの変化と共にだんだん普通の音に戻って澄んだ音に変わっていくという。そういった音でも今回は細かいところまでやらせてもらいました」

 

……20代の頃に親友を2人亡くされた監督が、本作の内容に共感されメガホンを取られたと伺っておりますが、監督ご自身が伝えたかったことは、どんなメッセージでしょうか?

「前作が『ソロモンの偽証』という自殺してしまう話だったので、実は監督をやるかどうか悩みました。でも『ソロモンの偽証』が“死ぬな、生きろ”というストレートなものだとするなら、今回の原作を読んだ時に“死ぬな”というより“人生って捨てたもんじゃないだろ?”という柔らかいメッセージだったんです。“希望って何?”ということを観る人と一緒に考えるような。そんな包み込むような感じをエンディングの解放感で迎えることをポイントにしました。僕自身、メッセージ性を押し付けたくないほうなので、「これがメッセージ」と声高に叫ぶつもりはなかったのですが、コブクロの主題歌「心」が最後に決まったことでこの作品が完成した気がします。コブクロの小渕さんが映画を観ていただいて歌詞を作ってくださったんですが、小渕さん自身も厳しい会社員時代を経て今に至るので、シンクロされる思いが歌詞に詰まっていて。心を閉じてしまったら、どんどん失っていくばかりだけど、自分の心と向き合って対話をすれば一緒に居られるという、この曲が映画を表していると思います。でも、決して押し付けではなく、彼らが感じた言葉で歌ってくださっているので、心に響く曲です。それが最後のパーツとしてうまくハマったので、「改めて映画って面白いな」という快感がありました。それを観客の方もエンドロールで味わっていただけるとこの上ない幸せです」

 

 

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STORY

ブラック企業で働く青山(工藤阿須加)は、疲労のあまり駅のホームで意識を失い、危うく電車に跳ねられそうになるが、間一髪のところで救われる。青山を救ったのは、幼馴染のヤマモト(福士蒼汰)を名乗る男。だが、青山には彼の記憶がまったく無かった…。大阪弁でいつでも爽やかな笑顔を見せる謎の男ヤマモトと出会ってから、青山は本来の明るさを取り戻し、仕事の成績も次第に上がってゆく。そんなある日、青山がヤマモトについて調べてみると、何と彼は3年前に自殺していた…。ではヤマモトを名乗るあの男は一体何者なのか?

 

『ちょっと今から仕事やめてくる』’17年/日/114分

監督・脚本:成島出

原作:北川恵海「ちょっと今から仕事やめてくる」(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)

出演:福士蒼汰 工藤阿須加 黒木華 森口瑤子 池田成志/小池栄子 吉田鋼太郎

※TOHOシネマズ天神、ユナイテッド・シネマキャナルシティ13、T・ジョイ博多、他にて公開中

http://www.choi-yame.jp/

 

©2017映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会


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