エンターテインメントフリーペーパー FLYING POSTMAN PRESS

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スペシャルインタビュー「WANIMA」

だから、『さよ朝』は愛される。

【INTRODUCTION】
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』シリーズ(’11~)や、『心が叫びたがってるんだ。』(’15)の脚本を担当してきた岡田麿里が初監督を務めた長編アニメーション。10代半ばで外見の成長が止まり、数百年生き続ける一族に生まれ育った少女マキアと、マキアが親代わりに育てたエリアルを中心に、さまざまな出会いと別れの物語が紡がれる。アニメーション制作は、岡田麿里と多くの作品でタッグを組んできたP.A.WORKS。“ひとりぼっち”と“ひとりぼっち”が出会い、紡いだ、大切で二度とはない時間に心を震わせたい。
【STORY】
人里離れた土地で布を織りながら暮らすイオルフの民の少女マキア(石見舞菜香)。ある日、イオルフの長寿の血を求め、メザーテ軍が攻め込んできたことから、その平穏な日々は崩壊する。帰る場所を失ったマキアは森を彷徨ううちに親を亡くしたばかりの赤ん坊を見つけ、自身の手で育てることを決意し…。

いくつもの小さな物語が
ひとつの大きな“出会いと別れ”の物語に

数百年生き続けるイオルフの民マキアと、普通の男の子・エリアル(入野自由)。時間の進み具合が違う、というのがこの物語のポイントだ。故に、時間経過と共にふたりの関係性やその想いは都度、色合いを変えていく。さらに『さよ朝』では、ふたりを取り巻く人々の物語も同時に進んでいく。マキアの友だちであるイオルフの少女レイリア(芽野愛衣)と少年クリム(梶裕貴)、幼い頃のエリアルの兄貴分だったラング(細谷佳正)、エリアルの幼馴染みのディタ(日笠陽子)、イオルフの里に侵攻したメザーテの軍人イゾル(杉田智和)…。そんな人々のドラマが時に交錯し、時にすれ違ってひとつの大きな物語を織り上げている。精巧であり、かつ雄大な物語をどんなふうに書いていったのか。岡田麿里監督に“ストーリーの作り方”を尋ねた。

岡田麿里監督のストーリーテリング

スペシャルインタビュー「ボス・ベイビー」

――本作は以前から描きたかった物語だったそうですね。着想を聞かせてください。
「P.A.WORKSと『凪のあすから』(’13~’14)という作品を作ったんですけど、その中で、海の村が氷に閉ざされてしまい、数年後にその氷が解けた時、当時の姿のままの幼馴染みが戻ってくる…という内容があったんですね。もともと、そういう時間のズレが人の関係にどう影響するか…というような話が好きなんです。そういう、好きな話をまた違う形で書けないかと考えたのが始まりでした。あと、強い人間関係を描いてみたかったというのもあって。“強い人間関係ってなんだ?”と思った時、恋人だったら解消しようと思えばできちゃうじゃないですか。でも親子はいい意味でも悪い意味でも解消できないものだなって」
――確かにそうですね。
「今回のマキアの場合、親がいなくて、自分はひとりぼっちだと感じている。でもだからこそ、親子というのは絶対に壊れない関係性なんだと思い込んでいるというか。それでエリアルと出会った時、もう自分はひとりぼっちになりたくないから、彼の母になりたいと願った。母として息子を守る…そういう強い関係性に憧れているひとりぼっちの話を、最初にお話しした“時間の話”と重ねられたらなと」
――脚本を書き始める時は、まずはキャラクター構築からですか?
「そうですね。まず何となくこんな話を書きたいと決めたら、その後はキャラクターを作っていきます」
――例えば、書きたいシーンや台詞先行で始まることもありますか?
「書きたい強いシーンがあって、そこに向かって書いていくということもあります。ただ、キャラクターが走り出しちゃうと、どうしてもそのシーンと食い合わせが悪くなったりすることもあって。その場合はそのシーンの印象を変えてみたり。今回の『さよ朝』はマキアとエリアル以外はそんなにシーン数が多くありません。例えば、レイリアとかクリムって登場回数で言うと少ないんです。でも、時間が移り変わる中でまた彼らが出てきた時、観た人に強烈に印象づけておきたいなと。それで割とレイリアとクリムのシーンは最初に考えたりしました」
――キャラが走り出した結果、思い描いていた結末と違う場所に辿り着くこともあるんですか?
「今回はなかったですね。今回はいくつか挑戦してみたいことがあって。例えばいくつかのキャラクターの物語を同時に動かし、それが重なった時、すべてのキャラクターの筋がマキアとエリアルの本筋に影響を与えるようにしたいなと。そういうことがうまくいくようにと思っていたので、結末を変えるというようなこともなかったんです。あと、映画だからというのもあります。テレビシリーズの脚本だと、シナリオ打ち合わせ自体が長丁場になるので。スタッフがこっちのほうがノッているからこうしようとか、現場の熱みたいなものも展開を変えるきっかけになったりもしますから」
――いくつか時間軸があり、重ね合わせるというと、パズルを組むような緻密な計算が必要だったかと思いますが。
「パズルっぽいところはありました。ただ、そう見えちゃうとダメなので(笑)。あくまで小さな小さな物語が、ひとつの大きな物語になるようにと思いながら書きました」

スペシャルインタビュー「ボス・ベイビー」

――物語への入り方という点ではいかがでしょうか。
「今回の場合、何しろファンタジーなので、いかに現実世界との地続き感を出していくかということを考えました。それには、体感に訴えるものが必要だと思って。例えば、冒頭では光を強めにしてもらったり、青を濃くしてもらったり、その辺りの鮮烈さで伝えたいなと。冒頭でマキアが里を歩いていくところの光の調整とかは一シナリオライターではできないこと。今回、監督として映像で相談させてもらえたからこそ、いつもよりは強い台詞とかにも頼らずに済んだのではないかと思います」
――物語の書き手としての岡田監督のスタートも伺いたいのですが。いつ頃から書き始めたんですか?
「小学校6年生の時、授業で“悪の組織の建物に子どもたちが乗り込むだけの話”を書きまして。見張りのロボットの急所に石を当てるんだとか、そういうどうでもいい話が最初に書いたお話です(笑)。それが割と楽しく書けたので、その後すぐにその頃流行っていた人気アイドルグループと私がイチャイチャする小説を書きました(笑)。雪山で出会う“雪山篇”、その後“海篇”も。彼らの歌から取ったタイトルの小説だったんですけど」
――イチャイチャするのはメンバーの全員となんですか(笑)?
「そうなんですよ。やっぱりその頃から群像劇が好きだったみたいです(笑)。でも私、本当にそういう訳のわからないところがありまして。メンバーの中にも苦手な人がいたんですけど、個人的に見たくないシーンも放り出すことは許せないと言いますか…」
――ご自身に負荷をかけて書かれるわけですね。
「そうなんですよね。今ふと、あの頃書いた話は今の自分の何かにはなっているなと思いました。いい意味でも悪い意味でも(笑)」
――そんな物語る岡田監督の最新作は、どんな映画になったと言えますか。
「監督をやらせていただいたことで、表情や景色でもキャラクターの感情を強化できたり…すごく真面目な作品ができたんじゃないかなと思います。ひとりぼっちの子がひとりぼっちの子と出会い、ひとりじゃなくなる瞬間が映画の中には一杯あって。誰かと繋がりたいとか、誰かを守りたいとか、そういう気持ちを、いろんなキャラに自分を重ねてもらいながら感じ取ってもらえたらうれしいです」
岡田麿里(おかだ まり)
’96年にVシネマで脚本家デビュー。シリーズ構成や脚本を手がけた主なアニメ作品に『花咲くいろは』(’11)、『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(’13)、『心が叫びたがってるんだ。』(’15)。本作が初監督アニメーション映画となる。
『さよならの朝に約束の花をかざろう』
’18/日/115分
監督・脚本:岡田麿里
ボイスキャスト:石見舞菜香、入野自由、茅野愛衣、梶 裕貴、沢城みゆき、細谷佳正、佐藤利奈、日笠陽子、久野美咲、杉田智和、平田広明、他
※2/24(土)より全国公開
PHクレジット
©PROJECT MAQUIA

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