エンターテインメントフリーペーパー FLYING POSTMAN PRESS

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スペシャルインタビュー「秦 基博」

曲が新しい景色を得ていくことは
作り手冥利に尽きる瞬間

――それはさっきおっしゃっていた理想の形ですね。
「曲がどんどん自由になり新しい景色を得ていくことは、作り手冥利に尽きる瞬間。曲は聴いてくれる人のものになって欲しいし、聴いてくれる人の中でたくさんイメージが広がればいいなということはいつも思っていることなので。僕自身はひとつのメッセージや景色を描こうと作るわけですが、聴いてくれた人の中で全然違うものになっていい。ひとりでやっているので、いろんなところに自分が投影されてはいくんですが、どこか一部分でもその人の中で共鳴してくれたら、音楽を作っている意味がある。そういう余白というか解釈の仕方ができるような言葉やメロディを常に意識していますね」
――改めて、ご自身の声をどう感じてらっしゃいますか?
「声を褒めていただくことは多いのですが、中学時代にギターを持ち始めた頃からずっとこの声なので、実は特別に意識したことはないんですよね(笑)。でも、あるメロディをどう歌うとどんな声の表情が出るのかなどは、僕自身が一番わかっています。それを最大限に活かせるような曲作りをしているんだろうなと思います。無意識ですが。自分が歌って初めて完成するメロディと歌詞なんだろうなって。…なんというか、メロディだけでも言葉だけでも足りないめざす場所へ、最後の説得力として歌に託すことができる感じはすごくします。悲しい歌を笑いながら歌うのか泣きながら歌うのかでも全然感じ方は違ってきますしね。歌声の説得力は大きいと思います」
――では、この10年でキーになった曲を挙げるとすると?
「2ndシングル『鱗(うろこ)』(2007年)は大きかったですね。弾き語りで作った世界がまずあって、そこに亀田(誠治)さんにサウンドプロデューサーとして参加していただき、もうひとつの世界ができあがりました。本来の曲の色や持ち味が増幅され、“こうやって音楽は輝くんだ!”って衝撃的な経験でしたね。この衝撃があったからこそ、いろんなミュージシャンやプロデューサーたちと曲の世界を作り込んでいくという1st、2ndアルバムの方向性が決まったと思います」
――大きな経験だったんですね。
「ひとりでやってきた音楽がいろんな人たちとの化学反応で広がっていくことを知りました。そして、“じゃあ自分で音の世界を作るためにはどうしたらいいのか?”ってことも考えるようになったんです。“なんか違う”ことはわかるけど、どう違うかわからなかったことが、少しずつ音のことやアレンジなどの方法論を得ていった。この10年はその積み重ねでもありますね。最新アルバム『青の光景』(2015年)は全曲自分でアレンジもしました。音楽理論的に歪だとしても、自分が入れたい音が溢れている方が秦基博の作品としてはいいんじゃないかなって」
スペシャルインタビュー「秦 基博」――5/3に『Girl』(2013年アルバム『Signed POP』収録)がシングルカットされ、翌日は横浜スタジアムで2部構成のライブがあります。
「1部は昨年のアリーナツアーと同様、バンドにストリングスを加えたフルセットの編成、2部は“GREEN MIND”と題して弾き語りを軸にアコースティックでやる予定です。自分が10年かけてやってきた音楽表現を全部味わってもらえる構成にしました。弾き語りでワンマンライブをするようになり、ビートを変えたり弾き方を工夫したり、アレンジを根本的に考え直すきっかけにもなりました。もはや自宅でひとりギターを弾いていた弾き語りではない。原曲をそのままやって成立する曲もあれば、ドラムやベースがないとビートが感じられない曲もある。じゃあそれをアコギ1本でどう作っていくのかなど、デビュー以降の弾き語りの試行錯誤の集大成も横浜スタジアムですべてお見せできればと思います」

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